儚く甘い
達哉はもう一度みわの兄と母に頭を下げてから、笑顔で家族に手を振るみわの車いすを押しながら、大学で一番思い出の残る場所へと向かう。

講堂の入り口を入ると、車いすを置いて、達哉は軽々とみわをおんぶして階段を登った。

みわの体調が悪い時はこうして何度も階段を登った日々を思い出す。

2人並んで階段を登った日も。
屋上の扉を開けた瞬間、みわが待っていた日のことも。

初めてみわに声をかけたあの日のことも。

鮮明に思いだすと、一歩一歩がかなり重く意味のあるものに感じた。

達哉がゆっくりと大学の屋上の扉を開けると・・・
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