ひとつ、ふたつ、ひみつ。


入学式から、1ヵ月が過ぎた。


私は今、ふんわり広がったスカートと、ヒラヒラフリルのエプロンドレス姿で、バイト先で働いている。


このことは絶対に、誰にも秘密。


バイト先の入口が開いて、来店を知らせるベルがカランと鳴る。


「お帰りなさいませ、ご主人様」


私がむかえた、その先は。


「あ、やっぱり高槻さんだったんだ。そのメガネ、変装か何か?」


隣に越してきた男の子は、たまたま同じ高校に進学していて、
たまたま同じクラスになって、
出席番号順に座ったら、たまたま隣同士になって。

偶然にしては、出来すぎている。


「……に、仁村くん?」


誰にも言えない秘密を知るのが、またあなただなんて。
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