ひとつ、ふたつ、ひみつ。
三角ショートケーキは甘くない
「おい、ちぃ」

「……」

「ちぃ。なぁ、千乃」

「…………」

「……なに無視してんだ、ちぃのくせに」

「いっ!? いたたたたっ」


頬を襲った痛みで、目が覚めた。

私の右手には、フォーク。

視線を落としてテーブルを見ると、フォークの跡がついたウィンナーが、皿の横に転がっていた。


「こら、やめなさい敦史。女の子にひどいことしないの」


エプロン姿のおばさんが、あっくんに向けて眉を寄せている。


ほっぺた、痛い。

私の隣には、制服姿のあっくんが不機嫌な顔をして座っている。

あっくんに頬をつままられたらしい。

窓の外は明るくて、私も制服を着ている。


いつの間に、朝になったんだろう。
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