玉響なる風は、水とともに



「妖、逃しちまった」

大きな屋敷に入り一室の扉を開けながら、そう言うレオナードに部屋にいた全員はレオナードに顔を向ける。

レオナードから少し離れたところにいた、風音たちの姿に気が付いた黒い髪を三つ編みにしたイヅナ・クリアウォーターは「風音!?」と立ち上がった。

「……どうも」

軽く会釈し、風音は部屋に入る。葉月と真冬も部屋に入ると、「葉月に真冬まで」とイヅナの上司であるツヤ・シノノメは葉月と真冬をじっと見つめた。

「……一体、どういうことかな?」

ティーカップを片手にしばらく無言でいた紫がかった髪の男性――ギルベルト・エーデルシュタインは、ティーカップを机に置くとレオナードを見つめる。

「……詳しくは、僕から話します」

風音たちの後ろにいたヴィンセントは、そう言って前に出た。

「……僕とレオナードはいつも通り任務に当たってて、そこで妖――巨人と遭遇しました……その巨人は、不思議な穴を開けて消えていって……レオナードと追いかけて穴に飛び込んでみたら、目の前には颯さんがいたんです……簡単に事情を話したらすぐに妖を探すのを手伝ってくれまして、巨人と戦ってる時に風音たちと出会って……それから――」
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