玉響なる風は、水とともに
風音は、そう呟くと扇子を開いて風を起こすとレオナードを吹き飛ばす。

次の瞬間さっきまでレオナードの居た場所には巨人の拳があり、颯に受け止められたレオナードは「おわっ!あっぶね~!」と声を出した。

「ふふっ……来てくれたのかい?風音、葉月、真冬……」

「颯、これは一体……?」

颯の近くまで走ってきた風音たちは、巨人に目を移す。

「分からない、急に現れて……」

レオナードから離れ、扇子を構え直した颯はそう呟いて巨人を見つめた。しばらくの間風音たちを警戒したように見つめた後、巨人は不思議な黒い穴を開いて姿を消す。

「……レオナード、追いかけるよ!」

白髪に紫目の男性――ヴィンセント・レゴシは、弓を片手に穴に向かって走り出した。

「はいはーい。お前らも来い!」

適当に返事をしたレオナードは、近くにいた風音の手首を掴むとヴィンセントの後を追って走り出す。

風音が突然連れて行かれたことに呆然としている葉月の肩を、颯は叩いた。

「……あの2人に、着いて行くんだ」

「……え?わ、分かった……!」

颯の言葉に戸惑いながらも、何とか返事をした葉月は真冬と一緒に走り出す。

穴に飛び込んで姿を消した皆を見て、颯は「……大変なことになったねぇ……」と呟いた。
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