a piece of cake〜君に恋をするのは何より簡単なこと〜
* * * *

 部屋に置かれた那津の荷物を、周吾は感慨深そうに眺めていた。

「あと三日、那津さんと一緒にいられるなんて嬉しいな」

 海に落ちて気を失ってしまったため、那津は周吾の部屋でようやくシャワーを浴びた。持ってきた服に着替えようかと思っていたが、前回のことがよほど気に入ったのか、周吾からTシャツを手渡されて渋々袖を通す。

「今日入れて三日しかないけどね……」

 ベッドに座っていた周吾は、部屋に戻ってきた那津に手を差し伸べる。那津が手を重ねた瞬間、彼女の体を引き寄せ膝の上に乗せた。

 それから真剣な眼差しで那津を見つめると、ゆっくり口を開く。

「那津さん、聞いてほしいことがあるんだ」
「うん……」
「俺、那津さんが好きだよ。だから俺と付き合って欲しい」

 周吾の言葉が嬉しくて、那津は嬉しそうに微笑む。

 たった一週間で恋が始まるわけがないって思っていたのに、本当に彼の言う通りになってしまった。

「うん……私も周吾くんが好き……」

 那津が言うと、周吾はポケットから何かを取り出す。それから那津の首に手を回した。

「もう一つ、お願いがあるんだ」

 首にくすぐったさを感じて触れてみると、ネックレスが揺れている。

「これって……?」
「俺からのプレゼント。覚えてる? 初めて入ったお店で、那津さん、そのネックレス見て笑顔になったんだ」

 改めて触ってみると、ハイビスカスのトップがついていた。
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