ねこのひるねの、ひとりごと

母を抱えた祖母の戦争

じいと一緒に旧満州にいたばあちゃんは。
チビの母を連れて日本に帰るために集まっていた人達と一緒に、長い距離を歩いて移動したという。そしてこれに乗らなければ、後はないかもしれないという列車に乗れた。
そして。なんとか。ほんとになんとか。
日本の舞鶴に辿り着いた。

ここで、ばあが母と一緒に戻って来てくれなければ。
テレビで一時放送されていた中国残留孤児になってたやろうと。
ポツリと母がつぶやいた。

これもばあから聞いての話ではないが。

長く寒い距離を歩いて移動する集団の中で泣く赤ん坊は所在を知られる危険な存在で、多くの母親が泣く子供を自分のお乳で窒息させたんだと。


じいもばあも。

「戦争」についての体験を己の中に抱え込んで語る事なく逝ってしまった。

もう少し、しっかり話を聞いておけばな。
でも。2人とも何も話してくれなかったんじゃないか、と思った。
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