ねこのひるねの、ひとりごと

ユウガオの生命力!

家のベランダから、大きな木が見える。

その太い幹を巻くようにみどりのつるが伸びている。

マルユウガオの苗を植えて、やっと蕾をつけてくれた。

いつ咲くか?いつ咲く気?なにぶん儚き一夜花。

見逃すわけにはいかないじゃないか。

だいぶ大きくなった蕾。咲いて欲しいわたしと母。

夕方まだ明るい頃から、2人して眺めていた。

「咲きそうな気、するんやけどなぁ。」
「今日、暑かったな。水切れか?ちょっと水やってくるわ。」
「カラカラ?」
「さぁ?分からんけど。そうやったらホンマお水で開くかも知れんな。」

とことこ。
母娘でジョウロに水を汲み、ユウガオの所へ向かった。

ふっくらとしてきた蕾に。
「今日は暑かったもんな。お水あげんの遅なってごめんな。」
「咲くとこ見たいなあ。」

水をたっぷり根元注いで。
家の中に戻った。

わたしは翌日の用意などで、ちょっとごそごそ。

「ひるねー!昼寝しとらんと。ちょっと()い!はよ、はよ!!」
ドンドンドンドンと、鞄を持ったまま母の許へ。

「ほら。ほどけてきたで。これ、今日咲くわ!」

外は夕暮れ。
その景色の中、白いほころびかけた蕾。

「えー。あんなに膨らんでんの?」
わたしが部屋でごそごそしてる間に、かなり大きくなっていた。

「・・・」
「・・・」

二人して無言で見入った。
と。
ヴァッ!!

音が聴こえた気がした。

一気に白いマルユウガオが惜しげもなく花開いた。

誰が儚いって言った。
こんなに力強く花開くのに。

例え一夜花であったとしても。
その瞬間を精一杯、花開く。
命の力だ!

一夜限りの花を咲かせるために。
身を削って蕾を育て、大輪の花となる。

そんな一途な命のありようを、人も持っていたはずなのに。

いつか、どこかで失くしたのかもしれない。
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