いいかげんに気付きなよ。
葵くんはゆらゆらと椅子を揺らしてそっぽを向いている。
何を考えているのかはさっぱり検討がつかない。
……どういうこと?
急に黙ったと思ったら、今度は急に集中し始めるなんて。
「……ほんとだ。作文用紙が埋まるどころかしっかり感動的な作文になってる……
実は葵くんってばやればできるよね」
「まぁー、俺はいわゆる"やればできる子"だから」
はは、と笑う葵くんはさっきの張りつめた雰囲気ではなくなっていた。
……気のせい、だったのかな。
葵くんのなかで何かが胸に引っかかってるような、苦しくて頭のなかでぐるぐる悩んでるような、
そんな気がしたのに。
勘違い……だったのかな。
「……じゃあこれ、約束の今回のご褒美。私いちおしの春限定ソーダ味」
「あー、そうだった。そうだったね……ありがと」