追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 お望みの顎髭は三種類、あとはチョビ髭やらノーマルの口髭を用意した。
 しかし、実際選んでつけてみると、びっくりするくらい似合わない。ディオの顔は小さくすっきりしているので、いかつい顎髭をつけると非常にアンバランスで、悪目立ちしてしまう。

「そうか……似合わないか……」

 私とウーノに笑われたディオは、悲しそうに髭を取った。そんなにつけたいなら、つけさせてあげたい。でも、目立たなくしようとしているのに、逆に目立つのはいかがなものか。
 そう思い、心を鬼にして却下したのである。

「今のままでもディオだとはわかりませんよ。特に眼帯がいい味出しています。とても似合っていますよ!」

「眼帯か、うん。これはいいな。謎多き騎士といった感じかな」

「謎多き騎士……確かに。ディオは最初から謎だらけでしたよね。あまりにも謎過ぎて、得体が知れない感がありましたよ」

 お陰でヘンルーダとディオの変なバックストーリー(妄想)を作ってしまった。実家から逃げている貴族令嬢と、隠匿された御曹司。あれ、よく考えたら、それほどかけ離れてはいないよね。

「その件に関しては、大変申し訳なく思っている……」
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