嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 転生前の知識もあるから、普通の貴族令嬢とは違ってタフなところはあるけれど、やっぱり女性なのだ。襲われたらひとたまりもない。

 多分、兄上の渡した魔法石のピアスがある程度は守ってくれるだろう。けれど、もう一晩経っている。何の用意もないまま野宿していないといいのだけど。

 兄上の執務室にしばらくは軟禁だ。

 僕は深いため息を吐いて、絵筆はアトリエに置いていくことにした。兄上の代理をするとなると、今後の生活がガラリと変化するだろう。そのことを思うと、僕はまた一つ深くため息を吐いた。





(イたたた、もうっ、いたいけな淑女なんだから、優しく扱ってよね、)

 マルーン市場に寄って、気分転換と思ったらいきなり腕を掴まれた。

 この魔法石のピアスは、どうやら性的に邪なことを考えて触ってくる手は阻むけど、ただ単なる暴力を抑えることはできないようだ。

「何するのっ」

 叫んだけれど、いきなり口を押えられ、何も言えなくなる。その内、空気を吸えなくなった私は意識がフラフラし始めて、気を失ってしまった。

 気が付くと、そこは馬車の中だった。口も縛られているから、やっぱり声を出すことが出来ない。

(もうっ、こんなことなら、ユウ君の馬車に乗れば良かった)

 後悔しても始まらないが、私もイライラしすぎたのが悪かった。

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