嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 俺はこいつが見かけ以上に賢いことを知っている。普段はそうと見えないように振舞っていることも。その理由が、俺と後継者争いをしたくないことと知っているから、そのままにしておいた。だが、今は協力してもらうことにする。

「チャーリー、話は聞いていたな。お前はユゥベールを補佐しろ。俺は一度ディリスと会う」

 先ずはマルーク市場だ。彼女が攫われた現場を確認しておきたい。急ぎ馬に乗るため、俺は馬舎に向かった。





「はぁ~、殺されるかと思った」

「ユゥベール殿下、今からウィルストン殿下の執務室への移動をお願いします」

「あ、あぁ、わかったよ。今行く。リアリムのことは、兄上が動いた方が早いからね、」

 ポリポリと頭をかく。流石に今回は僕も動かないとマズイ。リアリムを怒らせたのは僕だから、僕にもできることをしなくては。

「でもまぁ、兄上にバレなくてよかった」

 僕とリアが転生前は双子だったことは、兄上にしてみれば朗報だろう。僕たちの仲がいいのも理解しやすい。

だけど、ディリスとチャーリーが乙女ゲームの攻略対象だと知られてしまうと厄介だ。あの執着と独占欲の塊のような兄上だ。優秀な二人の部下を殺しかねない。社会的か、肉体的か。ううっ、怖い。

とにかく、今はリアリムの無事を祈るしかない。こんな、ヒロインが攫われるイベントはなかった。

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