嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 でも、心配させてしまうだろうな、ディリスお兄様とか、お父さま。多分、病弱なお母さまには連絡しないと思うけど、それに。ウィルストン殿下も、心配するだろうな。

 とにかく、何か考えていなければ恐怖で身体が動かなくなる。

 ガタゴトと揺らされると、気持ち悪くなってくる。きっとこの馬車、安物だ、スプリングが悪くて、乗り心地が良くない。

 ということは、やはり平民用の馬車だろう。

 私を攫っている人たちが、いわゆるプロなのかどうか。もしかすると、森の奥まで運ばれて、遺体が見つかりにくいところで殺されるのかもしれない。

 そうした怖い想像は止めておこう。とにかく。生き延びることが大切だから、この人たちがその道のプロでないことを願う。

 そんなことを考えていたら、スピードが緩くなった。

「おい、ここら辺でいいだろう。停めろ」

「はいっ」

 野太い声が聞こえる。御者台に座っているのは男と、少年なのだろうか、声が幼い。それでも護身術ぐらいしか習っていない私が、どうにかできるとも思えない。

 そのうち、馬車はそっと止まるとドアがガチャリと開いた。

「ここだ、出ろ」

 腕は縛られているけれど、足は自由だ。馬車から降りると、やはり周囲には何もない街道だ。鬱蒼とした森が広がる。

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