嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
元々、街道に倒れていたのを運び込まれた私だったから、荷物など何もない。

最後に夕食を一緒に、と言われた私たちであったが、私が必要以上に疲れるといけないので、とウィルティム様は丁寧に断りを告げた。

「またぜひ、侯爵夫妻とは一緒に晩餐を共にしたいです」

 そう告げると、「ではその機会に」と言って二人と別れた。

 もう、足の調子は良くなったと伝えても、ウィルティム様は私を横抱きにして移動した。

「ウィル、ウィル、恥ずかしいよ、大丈夫だよ。私、杖があれば歩けるから、」

「リーア、俺が杖替わりだと思えばいいよ。それに、知っているかい? 新しい家に入る時、夫は妻をこうして横抱きにして入るのがこの街の言い伝えだよ」

 そんな、新婚家庭であれば可能だろうけど、と思いつつも、そう聞くと嬉しくてポッと頬が染まる。

 邸宅で身体を洗って来たのであろう、ウィルティム様からはスッキリとした柑橘系の香りがした。

「リア、あぁ、待ちきれないな。でも、先に何か食べよう。寝室に用意させるから」

 馬車に乗っても常に身体のどこかが密着している。指を絡めて私の手を握り締める彼の手を、私もギュッと握ると、蕩けるような視線が降りてきた。

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