嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
邸宅に着くと、そこに急遽集められたメイド達に支度を言いつける。護衛の為の騎士も揃っていた。準備の早さに驚くと、「こういう時こそ、身分に役立ってもらわないとね」と彼は答えた。

これではまるで、二人きりで過ごすプレ・ハネムーンみたいだ。

終始ご機嫌な顔をしたウィルティム様を見上げながら、私も嬉しくなって期待でドキドキしている。

ほんのちょっぴり、攫われて良かったのかも、と思ってしまう私だった。






「なんだか、風のように去ってしまいましたね。あなた、」

「メイ、寂しいのはわかるよ。君はとても丁寧に対応してくれたから、ね」

 侯爵夫妻は慌ただしく屋敷を後にした二人を思い出す。

「でも、良かったのでしょうか。騎士様の身元など、確認しませんでしたが。あなた、何かご存じなの?」

 メイティーラとしては、可愛がっていた娘が急にいなくなってしまった感傷に、ついつい文句を言いたくなった。

「メイ、あのお方達のことは、今は詮索してはいけないよ。本当に、未来の国王、皇后陛下になるかもしれないとは、とても思えないけれど」

 最後の方は、妻に聞こえないようにゴウ侯爵はぼそぼそと呟いた。

 たまたま、街道に気を失って倒れていた女性を助けたつもりが、まさか、第一王子の意中の女性であったとは。女性の実家に便りを出したつもりが、まさか王子本人が迎えに来たことも驚きだった。

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