嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 サリエルさんと一緒に、庭園で話をされているイザベラ様のお話の輪に入る。今日の話題はやっぱり第一王子のことみたい。

「ほんと、あの銀色を纏われた姿は麗しかったですわ、あの隣に立てるようなお方は、イザベラ様以外にありませんね」

 あ、サリエルさんに先を越されてしまった。私も話題についていかなくちゃ。

「えぇ、先日の夜会でのお姿といったら!アメジストのように美しく光る瞳に見つめられて、胸をときめかせない方はいませんわ。怜悧な眼差しに麗しいお顔の、絵にかいたような王子様。本当に、結婚相手として最高の方ですね、」

 あれ、周囲がざわついている。私、おかしなことを言ったかしら。

「やっぱり、そんな方に相応しいのはイザ、、」

「おや、私のことをそんな風に言ってくれるなんて、嬉しいですね」

 突然、後ろから男性の声が聞こえてくる。

発言の内容からすると、もしかして――

 ギギギ、と顔を後ろに向けるとそこにいたのは銀色の髪を風になびかせて、腕を組みながらにっこりと笑うウィルストン第一王子殿下、その人だった。

「ひっ」

 思わず顔を引きつらせてしまう。あまりの驚きに、心臓が壊れそうにドキドキしている。

「で、殿下、なぜここに」

 思わず呟いてしまう。そんな私をアメジストの瞳が真っすぐに見つめていた。

「確か君は、ミンストン伯爵令嬢、かな?」

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