嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
「は、はい。リアリム・ミンストンと申します、殿下」

 きちんと向き合って、スカートの端を持ち上げてお辞儀をする。恐れ多いから顔を上げることができない。

「あ、そんなにかしこまらなくていいよ、顔を上げて」

 にっこりと微笑む王子様は、まるで後光がさしているようだ。あ、髪が輝いているだけだ。

「先程の君の言葉、嬉しいよ。早速だけど、今度王宮で開かれるお茶会に君も参加して欲しいな。招待状を送らせてもらうね」

「へ?」

 間抜けな顔をして返事をする。あれ?先程の私の言葉って?確か、、王子はイザベラ様に相応しいって言わなきゃって――

 うわわわわ!王子を褒めただけで、最後の肝心の言葉を言っていない!

 これでは、まるで私が王子を好きで、結婚相手として最高と言っているようなものだ。

 周囲にいる令嬢達は、顔を少し青ざめさせている。肝心のイザベラ様も、手をわなわなとさせて扇が震えている、マズイ!

「あ、あの、私の先ほどの発言は、実は」

「私を拒否する言葉は聞きたくないな、リアリム嬢」

 私が言おうとしていることなど、わかりきった顔をした王子は先手を打ってきた。ついでに私の顎をちょっと持ち上げて、口角をくっと上げて楽しそうに笑っている。

「こうしてみると、君の瞳は面白い色をしているね。深い紺色のようだが、日に当たると水色に変わる」

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