嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 この身体では。確かに初めてだ。ニホンでは浴びるほど飲んでいたけどね。

「そうか、それにしては、慣れているような、」

「ふへっ? そ、そうですか? きっと、ウィルティム様がいるから安心しているんですよ、私」

 誤魔化すように、もう一度ぐびっとエールを飲む。今日の目的は、とにかく一発お願いすることだ。この大ジョッキのエールを1杯飲み終わったら、お誘いしよう。

 彼もエールをグイっと飲む。ぷはーっと息を吐く姿は、決してお上品ではないのになぜか仕草が美しい。

「ウィルティム様も、エールがお好きですか? こうした居酒屋には良く来られるのですか?」

 アルコールが少し回っているのか、ウィルティム様は顔には出ていないが動作が緩やかになっている気がする。

「居酒屋は、それほど来ていないか、な。リアリムが来たいと言ったので驚いたところだ」

「えっとぉ、ウィルティム様にお願いがあって、その、あの、一度私とエッチして欲しいんです」

 エッチ、で意味が通じるかなぁ、と、ちょっと心配になって彼の顔を見ると、口を開けてポカーンとした顔をしていた。

「あの、ウィルティム様?」

「あっ、あぁ、すまない、一瞬耳がおかしくなったようだ。幻聴が聞こえてきて」

 私の発言を幻聴と思われたのか、ウィルティム様は再びエールをグイっと飲む。

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