嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 てっきり、居酒屋の二階で致すのかと思っていた私は、連れて行かれるままに馬車に乗せられた。

(あれ? いつのまに馬車が、どこに行くのかな、もう、ちょっと眠い、)

 馬車の揺れがいい感じで私の眠気を誘い、久しぶりのアルコールに酔った私は「少し寝るといいよ」という優しい声を聞いて、そのままウトウトと眠ってしまった。

 あ、あのおじさんにお礼も言えなかったな、

 そんな私は、自分がどこに連れ去られているのかさえ、わかっていなかった。そして、今押した書面の本当の意味も。

 夜は更けていき、気が付いた時には、私は天蓋付きの大きなベッドの上に横たわっていた。





「あ、いたた、頭痛い、」

 久しぶりのアルコールは、まだ身体に馴染んでいない。どうやらお酒を美味しく飲むには、もう少し身体を馴染ませる必要があるのかな、と、そんなことをまたボーっと思って周囲を見回す。

 あれ、ここはどこ? 見慣れぬ風景に、思わずポカンと口を開けた。天蓋のあるベッド、薄暗い部屋は重厚な雰囲気の家具が置かれている。寝室にしては広い部屋に、重たそうな両開きの扉。

 明らかに高貴な方の寝室に、イヤな予感がする。頭を押さえながらキョロキョロと部屋を眺めていると、後ろから声がかかる。

「リアリム、起きたかい? 喉、乾いている?」

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