モノクロカラー
8月31日のゲームセット。
太陽の光が眩しくて熱くて白いボールがキレイだった。
「お姉ちゃん。僕には何も才能がなかったね」
それはとても熱い夏の日だった。
野球帽を被った少年は私を見てさびしそうに笑った。
「ごめんね、お守りも貰ったのにさ」
その少年のユニホームは一人だけ真っ白だった。
少年は6年間バッターボックスには立てなかった。
「でも一番大きな声だしてたね」
私は笑って少年の頭をなでた。
その日は暗くなるまで少年とチャッチボールをした。
これが最後だとわかっていたから。

その夜、少年は自殺をした。
血豆のできた小さな手には、お守りが握り締められていた。


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