好きだけど、好きなのに、好きだから
「私、部室寄ってから教室戻るね」

そう言って、一人体育館の外階段に向かった。

気分転換。

外階段の扉を開けると、

あっ!

佐伯君。

ボールをお腹の位置で大事そうに抱えながら、扉に寄りかかり眠っている。

ふふっ、本当にバスケット大好きなんだね。

あーっ、ここにもいた。

恋とは無縁そうな人。

でも……

バスケットしてる時の佐伯君は、恋してるみたい。

キラキラしてるもんな。

バスケットする佐伯君を思い浮かべて、私はまた眠る彼へと視線を落とす。

恋をしたくないわけじゃなかった。

少なくとも高校に入学した時は、これから素敵な恋が出来ると思っていた。

でも、高校に入って部活を越える男子と出会うことはなかった。

そして、いつからだろう?

部活を引退すまでは恋をしない!

そう思うようになっていた。
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