好きだけど、好きなのに、好きだから
部活の後。

いつも通り佐伯君のシュート練習が始まって、私は転がったボールを拾おうと手を掛ける。

手と手が触れあう……

はっ!

昼の恋愛話のせいで、私まで変な妄想をしてしまった。

そんなことは、起こるわけもなくて……

「先輩、パス出してほしいっす」

「あっ、うん」

佐伯君は、バスケットのことを考えている。

佐伯君がバスケットにしか興味ないのは、バスケットに恋してるから。

毎日の努力が佐伯君からバスケットへの告白で、その努力した分の結果がバスケットから佐伯君への返事。

だから……

皆の妄想のようなことが起きたとしても、私が佐伯君にドキドキすることはないと思う。

私は今、そばで感じている。

佐伯君の一途で熱い、バスケットへの恋する気持ちを。
< 86 / 97 >

この作品をシェア

pagetop