八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「ちなみに、まだ生きてるから」
「えっ、そうなの⁉︎ てっきり……ごめん」
ハハッと笑って、椿くんが続ける。
「やっぱ勘違いしてた。もう年だから、福岡の伯父さん家に引っ越しただけ」
「なんだ、よかったー。会ってみたいなぁ。椿くんのおじいちゃん」
最後の階段を降りて、本殿を通らず遠回りをする。裏道を進み、手水舎のある表へ出た。
『六年前、一度だけ、この神社へ寄ったことがあるんだ。母の葬式のあと』
琥珀さんの言葉を思い出す。
あれ? さっき、椿くんはよく遊んだって……。兄弟って、藍くんのことだったのかな。
手水舎の花が変わっていた。
今日は、桜色と白の紫陽花。とてもキレイ。
でも違う。この色は、覚えがない。
この前に見た、青と紫の景色だけ記憶の片隅に残っている。
どこで見たものだろう?
手をつないで、本殿へ向かった。手を合わせて、お参りする。
ーーみんなと、ずっと仲良くいられますように。それから、椿くんと、もっと仲良くなれますように。
ふたつも願い事をして、よくばりだったかな。
誰もいない夕方の神社。茜空が広がっていく。
本殿の両脇に置かれている狛龍を見て、ふとよみがえる。
そういえば、藍くんの持っていたお守りも龍だった。大事ものなんだって。
椿くんが、ポケットから何かを取り出す。広げた手のひらには、緑の守袋があった。
「……そのお守り」
「母さんの形見なんだ」
そのとき、頭の中がチカチカと光って、映像がフラッシュバックした。
寂しそうな横顔。走り回った傷だらけの足。青と紫の紫陽花に、龍のお守りと指切り。
「えっ、そうなの⁉︎ てっきり……ごめん」
ハハッと笑って、椿くんが続ける。
「やっぱ勘違いしてた。もう年だから、福岡の伯父さん家に引っ越しただけ」
「なんだ、よかったー。会ってみたいなぁ。椿くんのおじいちゃん」
最後の階段を降りて、本殿を通らず遠回りをする。裏道を進み、手水舎のある表へ出た。
『六年前、一度だけ、この神社へ寄ったことがあるんだ。母の葬式のあと』
琥珀さんの言葉を思い出す。
あれ? さっき、椿くんはよく遊んだって……。兄弟って、藍くんのことだったのかな。
手水舎の花が変わっていた。
今日は、桜色と白の紫陽花。とてもキレイ。
でも違う。この色は、覚えがない。
この前に見た、青と紫の景色だけ記憶の片隅に残っている。
どこで見たものだろう?
手をつないで、本殿へ向かった。手を合わせて、お参りする。
ーーみんなと、ずっと仲良くいられますように。それから、椿くんと、もっと仲良くなれますように。
ふたつも願い事をして、よくばりだったかな。
誰もいない夕方の神社。茜空が広がっていく。
本殿の両脇に置かれている狛龍を見て、ふとよみがえる。
そういえば、藍くんの持っていたお守りも龍だった。大事ものなんだって。
椿くんが、ポケットから何かを取り出す。広げた手のひらには、緑の守袋があった。
「……そのお守り」
「母さんの形見なんだ」
そのとき、頭の中がチカチカと光って、映像がフラッシュバックした。
寂しそうな横顔。走り回った傷だらけの足。青と紫の紫陽花に、龍のお守りと指切り。