八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 スカイのクッションとおやつを買って、店を出た。

 さりげなく手をつないでくるから、ドキドキとヒヤヒヤに同時に襲われる。

 ここは人の目がある。わたしは今、男子の体と男子の制服。星園学園の人はいないかもしれないけど、不安だ。

 それに、ずっと聞けないでいたけど、椿くんには好きな人がいるはず。
 藍くんは、写真の人がそうだと言っていたけど、まだ信じられない。

 椿くんと会ったことはなかったし、この街へ来るのも初めてだった。

 でも、あの写真の女の子は間違いなくわたし。小学生の頃に遊んで撮っていた記憶も、なんとなくある。

「今度は、どこ行くの?」

「もう一個、一緒に行きたいところがある」

 重なる手に力が入る。

 しばらく歩いた先に、小さな丘が見えてきた。
 長い階段を上がり、草のしげる道を進んでいく。

 初めてくる場所なのに、知っている気がする。

 木の中を通りすぎて、下っていくとまた階段が現れた。その先に神社がある。
 この前、琥珀さんと立ち寄った南雲(なぐも)神社だ。

 裏側から入っていたから、気づかなかった。
 椿くんの行きたい場所って、ここなの?

「昔、たまに遊びにきたんだ。母さんや、兄弟で」

「そうなんだね」

 一段ずつ階段を下りながら、椿くんが静かに話し出した。

「幼稚園とか、そんなくらい。この近くに、じいちゃんの家があったんだ。今はもうないけど」

 椿くんのおじいちゃん。血のつながりはほとんどないに等しいほど、遠い親戚だと聞いている。くわしいことは知らない。

 会ったことも見たこともないけど、どんな人だったんだろう。
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