八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「ずっと、みんなと仲良くいたい。本当のこと言わないと、ウソツキのまま、さよならすることになるから。それだけは、イヤだったの」

 ポロポロとこぼれ落ちていく涙を、優しい指が受け止めてくれる。

「藍なら、大丈夫。たぶん、突然のことで頭がパンクしてるだけ」

 ポンと頭をなでられて、椿くんの大きな腕に抱き寄せられた。

 止めたいのに、ぐすぐずと涙は広がっていく。ぐちゃぐちゃの顔でもおかまいなし。

「でも、隠してたことは怒ってる」

「え?」

 急に声が低くなって、真っ赤な目を上に向ける。
 目の前にある整った顔が、少しツンとなって、こっちを見た。

「あの服、珀にもらったんでしょ」

「なんで、そのこと……!」

「知ってたんだ、珀も、碧の秘密」

 あまりに寂しそうだから、すぐに返事ができなかった。

 小さくうなずくと、椿くんはハァーっと頭をガクッと下げる。

「すっげぇ妬ける。せっかく、碧と両思いになれたのに」

「ごめん……なさい!」

 ほんのり染まっていく頬を隠すように、椿くんが横を向いた。

「……あんま、じっと見ないで」

「ごめん」

 さっきまで泣きじゃくっていたのに、こっちまで熱さが感染する。
 いろんな気持ちが絡まって、頭が弾け飛びそう。

「あと、少しの時間しかないんだ」

 ささやくほどの椿くんの声に、ハッとした。

 二週間後には、お別れしなくちゃならない。
 前から決まっていたことなのに、胸の奥がズシンと重くなって、苦しい。

 藍くん、穂村さんとも、ちゃんと仲直りできるかな。

 心のもやもやが大きくなって、消えてくれない。
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