八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「ごめん、そうゆう意味で聞いたわけじゃなくて。その服どうしたのかなって。誰かに」

「もう、隠してくれなくていいの。今まで、たくさん協力してくれて、ありがとう」

 椿くんの顔が、みるみるうちに青ざめていく。

「ごめんね、藍くん。わたし、ほんとは女子なんだ」

 緊張しながら、やっと口にできたことで、少しだけ体が軽くなる。
 藍くんの反応が怖くて、顔を上げられない。

「な、なに言ってんだよ! エイプリルフールはとっくに過ぎてるぞ。アオイが女? そんなわけない……」

 冗談を笑い飛ばすいきおいで、わたしのシャツが巻くしあげられようとしている。

 ちょっと、待って?
 今、女子の体に戻っているから、見えちゃう……!

 ピタリと動きが止まった。藍くんの手を、椿くんがガシッとつかんでいる。
 この空気を察してか、藍くんの手が開いていく。

「嘘だろ……なんだよ、それ。じゃあ、オレは今まで、ずっと」

 びくびくしながら顔を向けると、目が合った。とたんに藍くんの顔が真っ赤に染まって、キッと眉がつり上がる。

 そのまま無言でドアを開けて、ものすごい音を立てて出て行ってしまった。

 また、嫌われた。穂村さんのことがあったのに、無鉄砲に藍くんを傷つけた。

 黙っていたらウソツキになって、正直に話しても裏切り者になる。どうしたらいいのか、わからないよ。

「どうして話したの。服見ても、藍は碧をかばおうとしてた。ごまかすことだって、できただろ」

 床に転がるワンピースを拾って、椿くんがわたしに渡した。

 ふわっと広げると、きれいな水色のレースがキラキラしている。
 その色とブルーのハンカチを持つ昔の友達が重なって、胸の奥がズキンとなった。
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