八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 ごくりとのどが鳴るけど、目の前にあるまなざしは以前と少し違って感じる。

「その、だから、あれよ」

 伏せがちになっていく目と、ほんのり赤らんだ頬。まさか。
 気付いたら、穂村さんの頬を両手でおおっていた。

「キャッ!」

「わっ、ごめん⁉︎」

 慌てて離すけど、彼女の顔はみるみる赤みを増していく。

 涙目になっているし、首まで染まっている。

「ちょ、ちょっと、大丈夫? 熱あるんじゃない?」

「ーーっき!」

 キッと目尻を吊り上げて、穂村さんが一歩下がった。

「……え?」

「き、気安くさわんないでよね!」

 発狂しながら、瞬足で立ち去ってしまった。

 残されたわたしは、この場でぽつんと立ち尽くす。

「……すみません」

 わたし、嫌われてるのかな。
 とりあえず、彼女を敵に回すことだけは避けなければ。

 少し間を置いてから教室へ向かうつもりで、別棟の階段壁に背を預けたとき。

「ふむふむ。甘酸っぱいですなぁ」

「キラキラまぶしいですねぇ〜」

 階段から、ひょっこりとふたつの頭が飛び出した。

「んなっ、君たち! どこから出て来てんの⁉︎」
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