八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「はーい、よろしくね。待ってたよ、アオイくん」

 今度は少し年上っぽい男の人が現れて、わたしににこりと笑いかける。

 穏やかで優しそうな人。漫画に出てくる王子さまのような金髪をさらっと揺らしている。

 それにしても、顔面偏差値の高い兄弟だ。

 ……ん? さっきから、男子ばかり?
 お母さんの話だと、女の子が二人いるって。

「男だけのむさ苦しい家だけど、気楽に過ごしてね」


 女の子二人ーー以下、訂正。
 高等部一年の八城琥珀(やしろこはく)、長男。中等部二年の椿は次男で、中等部一年の(らん)。もちろん末っ子三男だ。

 どこか抜けている両親は、名前だけで判断した模様。撃沈。

 見た目は男子になってしまったけど、わたしの心は女子のまま。
 キラキラした眩しい美男子たちに囲まれて、無事に生きていられる自信がない。

 そう、この感じはあれと似ている。憧れのアイドルや理想の漫画キャラが目の前にいる感覚。

 控えめに言って、彼らから放たれるオーラは尊いのだ。

 自由に使ってと与えられた部屋には、シンプルな勉強机が二つあって、角にベッドが一つ置いてあった。どうして二つ?

 その心の疑問に答えるように、琥珀(こはく)さんがドアにもたれながら白い歯を見せる。

「とりあえず、何日かルームシェアしてね」
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