八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「三葉って、思ったより柔らかいな」

 見上げた顔から、勢いが抜けていく。

「……はい?」

 今、わたしは怒ってるんだけど。

 唇をへの字に曲げた顔にもお構いなしで、彼らは別の話題を広げ始める。

「太ってるわけじゃないし、もっと骨張ってゴツゴツしてるかと思ったけど。なんていうかさ」

 肩や腕を掴まれて、ゾワッと身が震えた。

 この人が嫌いってわけじゃないけど、イヤだ。あまりベタベタ触られるのはーー。

「碧に触るな」

 クラスメイトの手が振り払われた。突然やってきた、椿くんに。

 するどい視線で注意を促すと、彼らは引きつったような笑みを浮かべる。

「おおー、怖え。王子のご登場だぞ。行こうぜ」

 尻尾を巻くように、男子たちは離れて行った。

 また助けてもらっちゃった。

「……ありがとう」

 みんなが去ったあとでも、椿くんの表情はかたいまま。どうしたんだろうと首をかしげると、腕を引かれて、廊下へ連れ出された。

 不機嫌というより、動揺しているようにも見える。

「碧、どういうこと?」
< 60 / 160 >

この作品をシェア

pagetop