八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 戸惑ったように、琥珀さんが眉をひそめた。

「写真、撮るから来てって……頼まれて」

「……はあ、君って子は」

「ごめんなさい」

 髪をくしゃっとさせながら、あきれた様子でわたしを見ている。

「まあでも、見つかったのが俺でよかったね。他の風紀委員だったら、今ごろ職員室に連行されてるよ」

 その通りですと、下げた頭が上がらない。

 さっき琥珀さんがシャツをめくったから、わたしが男子だって証明できた。

『弟に妙なこと聞いてから、気になってたんだよな』

 仮に、三葉碧は女だという噂があったのだとしたら、たぶん、もう疑われることはなくなる。

「このお礼、どう返してくれる?」

 綺麗な瞳が近づいてきて、ぱちくりとまばたきをする。

「……どうって」

 また例のシーンを思い出して、大きく首を振った。鼻から下をガードしながら。

 忘れてたけど、琥珀さんって女たらしなんだった!

「今度、またアレ作ってよ。海老グラタン」

「……海老……グラタン?」

「なにか、違うことでも想像した?」

「そ、そんなわけ、ないじゃないですか!」

 勘違いして動揺するなんて、わたしのバカ。

 さらに恥ずかしくなって、膨らんだ風船から空気が抜けるみたいに小さくなる。

 最初は王子様みたいな人だと思っていたのに、琥珀さんって思いのほかイジワルだ。

 だけど、やっぱり根は優しいんだろうな。
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