八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「……フリ?」

「友達に、彼氏できたって嘘言っちゃって。そしたら、今度会わせてってなってさ」

 見栄をはったが後に引けなくなり、ウソカレとして、友達と会ってほしい。そう説明された。

「僕じゃなくて、他に適任いないのかなぁ?」

 あごに指を置いて考える。

 椿くんなら、スマートに演じてくれそうだ。ドジをして、バレることはなさそう。
 カップル繋ぎをする椿くんを想像したら、胸がズキンと痛んだ。やっぱり、今のはナシ。

 琥珀さんは、素で完璧なエスコートをするんだろうな。ただし、手が早そうだから却下。

 ここは、意外と藍くんがいい仕事をしてくれるかもしれない。一緒にはしゃいで、生意気だけど可愛いウソカレになるかも。

「こんなこと頼めるの、三葉っちしかいないの!」

 妄想から引き戻されて、目の前の穂村さんにドキッとする。

 今まで、誰かに頼られたことなんてほとんどなかった。友達だって、いなかったようなもの。

 だから、少し心がおどった。

「…….でも、また友達に嘘つくことになるけど、いいの?」

 言いながら、胸がズキズキする。
 自分のことを棚に上げて、よく言う。わたしこそ、みんなを騙しているくせして。

「仕方ないじゃん。今さら、ほんとのことなんか話せないよ。……嫌われたくないし」

 その気持ちが、痛いほど分かった。
 だから、わたしは引き受けたの。

 ウソカレをすることで、穂村さんを助けられるならと思って。
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