華夏の煌き
 朝議の後は、見習いの時と同じく軍師省にて政の補助的な仕事をする。

「そういえば、上座のほうに蒼樹に似た方がおられたな。父君か?」
「ああ、そうだ」

 曹隆明のそばに、大軍師の馬秀永がいて、その隣に郭蒼樹に似た年配の男が立っていた。

「蒼樹は若いんだな」
「何を言ってるんだ。星雷と同い年だぞ」
「いやあ。普段大人びてるからさ」

 郭蒼樹の父親はよく似ているが、さすがに蒼樹よりも数段落ち着いていて貫禄があった。それを目の当たりにすると、いつも自分よりもずいぶん大人びていると思う蒼樹は、青年なんだと実感してリラックスする。

「しかし、殿下はやはり違うな」
「あ、ああ」
「軍師省においでになった時は気さくで親しみを感じるが……」
「朝廷ではとても遠い存在に感じるな」

 星羅は襟足からそっと自分の髪に触れる。隆明と同じ手触りの髪に触れると、心が安らぎ慰められる。王太子、曹隆明が実の父と知った夜から「殿下は父上……」と髪に触れながら、寝台を濡らして夜を過ごしてきた。もう涙を流すことはないが、髪に触れる癖がついている。

「すぐにおそばに参れるさ」

 郭蒼樹の優しい口調に、星羅は「そうだな」と明るく答えた。
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