華夏の煌き
「色々な経験をする意思がないと軍師には向かないと思うぞ」
「そんなことないわ」
「軍師?」
「ああ、紅妹は今年で学舎を卒業して軍師試験を受けるつもりのようだ。受かるかどうか怪しいものだが」
「失礼ね。女学生の中で一番の成績なのよ?」
「まったくおてんばで困る」
「あら、星羅さんだって軍師じゃない」

 さすがの星羅にも柳紅美が郭蒼樹を好きなことが分かった。しかも何か誤解をしているのか、星羅は恋敵のような扱いで言葉にも態度にもとげがある。どうしたものかと考えていると、軽く眠って起きた徳樹がふああんと泣き声を出す。

「あ、起こしてしまったか。すまない」
「いいのいいの。まだまだこんな調子なのよ」
「抱いていいか?」
「え、ええ。大丈夫? 夫なんかこわがってしまって」
「俺の下に弟が3人いるんだ。結構、子守をさせられている」
「そうなのね。意外!」

 そっと取り上げ慣れた手つきで徳樹を抱き寄せる。徳樹は人見知りをすることなくすぐに機嫌がよくなり、また持ち前の好奇心を発揮し、蒼樹の頬を撫でる。

「ふふふっ。よく似ているな」
「ねえ! あたしにも抱かせてよ!」
「お前はだめだ。すぐに重いとか飽きたとか言って泣かせるからな。ほら、母上のところへ」

 ふわっと徳樹は星羅の手に渡る。その時に郭蒼樹の手が、星羅の手に触れていることを柳紅美は厳しい目で見ていた。

「そろそろ帰るよ」
「ああ、もう? 軍師省のほうはどうかしら?」
「まあぼちぼちだな」
「もう少ししたら復帰するつもり」
「そうか。待ってる」
「さよなら」

 最後までにこりともしない柳紅美は「すぐに追いつきますね」と宣戦布告のように告げて去っていった。

「うーん。後輩になるのかしら?」

 同じ軍師を目指すならば、仲良く協力したいと星羅は願う。復帰したときに郭蒼樹に彼女との仲を取り持ってもらおうと思った。

「明兄さま……」

 煩わしいことや、暗くなる気持ちをいつも明樹は明るく吹き飛ばしてくれた。その彼は今、遠く離れている。
 星羅は努力家で実行力もあり、志も高く未だ挫折というものを知らない。明樹がどれだけ心の支えになっているのか、今はまだ実感していなかった。
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