華夏の煌き
 当日、星羅は男装をして郭家と共に『銅雀台』へ参る。郭家と親戚の柳家の人たちは合わせて10名ほどいるが、星羅と赤子をみても特に関心を寄せてこない。

「あの、挨拶しようと思ったけど」

 参加させてもらったことの礼を述べたいと郭蒼樹に耳打ちする。

「いや、いい。俺の友人だと伝えているし特に何もしていないからな」
「そうなの?」
「ああ、心配するな。うちは礼儀にはこだわりがないのだ。何か良い策があれば、父が聞こうとするだろうが」

 笑っていう郭蒼樹に、星羅は郭家は一風変わった家族だと、大人しく端のほうで混じっていることにした。

 高くそびえる『銅雀台』を前にして星羅は目を細めて見上げる。ここにはかつてこの王朝を興した高祖が住んでいて、今は王の曹隆明が住んでいるのだ。

「籠を使うか?」

 すでに星羅と郭蒼樹以外は籠に乗って石段を上がっている。3名ほどまとまって乗っている籠もあるので、スピードは歩く程度だ。

「いや、自分の足で登りたい」
「そういうと思った。じゃあ俺もそうしよう」

 若い二人にこの程度の高さは億劫ではない。ただ星羅は徳樹を抱いているのでいつもより体力を使う。

「ほら、徳樹をよこせ」

 息が荒くなってきた星羅から郭蒼樹は徳樹を抱き上げる。

「すまない」
「いや平気だ。徳樹も楽しいようだぞ」

 表情がついてきた徳樹はきゃっきゃと声をあげている。その隣で一台の籠が止まり「あたしはここから歩くわ」と一人女人が出てきた。
 柳紅美だった。

「あ、こんにちは。紅美さんもきていたのね」
「ええ、もちろん」

 柳紅美は星羅をじろっと見た後、郭蒼樹とその腕の中の徳樹を見て「まるで夫君みたいですわね」と一言つぶやいた。

「そうか?」

 そっけなく答える郭蒼樹に柳紅美は不機嫌な様子を見せる。気づまりな空気に、星羅は足元の石段を見て黙ってあがる。
 柳紅美は並んで歩いていた、郭蒼樹と星羅の間にしっかり入って、二人の会話を妨げている。いつも軍師省で話し合っているので話せなくても平気だが、この女人からの嫌がらせに慣れていない星羅は居心地がとても悪かった。剣で戦うほうがよほど気が楽だ。

「さて、着いたな」

 郭蒼樹の言葉と、次の段がないことで星羅は最上段に来たことを知る。振り返って周囲を見渡す。

「すごい眺めだ。ずっと遠くまで見える」
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