カモミール
 ある日の定休日、私も仕事が休みだったので自室で本を読んで過ごしていた。お昼頃、コンコンコン、と部屋のドアをノックする音が聞こえた。

「開いてますよ」

 ドアが開いて真崎さんが顔を覗かせる。今日は髪を下ろしてTシャツにジーンズというラフな格好をしていた。トレードマークのサングラスは外さない。完全オフモードのときは肌着とステテコなので、おそらく店のキッチンに立っていたのだろう。

「腹減ってる?日替わりランチ向けに新メニュー作ったんだけど試食してくれないかな?」

 ほらきた。

「食べます!丁度お腹が空いていたんです」

 休日が重なると、お昼は試食と称して一緒に昼食を食べている。彼と一緒に店に下りて、私はカウンター席に腰掛けた。

「じゃーん、ロコモコ丼セット」

 白いボウルに入ったロコモコ丼と付け合わせのオニオンスープ。めちゃくちゃおいしそう。しかもボリューム満点だ。

「いただきまーす」

 肉汁たっぷりの煮込みハンバーグにとろりとした半熟卵とシャキシャキの野菜を混ぜ合わせる。一口それを頬張ると、煮込みソースが味わい深く、絶妙にいい仕事していた。これは食が進む。

「ん、おいしいです!」

「よかった。今度店に出すわ」

 彼も私と並んで座って自分のロコモコ丼を頬張っていた。

「コーヒー何飲む?」

「タンザニアAAで」

 最近はいろいろなコーヒーを試して飲むようになった。いくら飲んでも違いはいまいちよく分からないのだが。ふたりでコーヒーを飲みながらほっと一息つく。

「ロコモコ丼って語感がいいよな。ロコモコドン!みたいな」

「イントロドン」の調子でひとりごとのように彼はつぶやいた。至極どうでもいいことなのだが、なぜか笑えてしまう。

「ねえ、ギター弾いてください」

「今日は貸し切りコンサートか。高くつくぜ」

 彼は気取った風にそう言って、レジの脇に立てかけてある黒いケースからギターを取り出した。彼はカウンター席の後ろにあるテーブル席の椅子に座ってギターを構えた。
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