カモミール
「君、すげーだせーことしてる自覚ある?自分から振ったくせにのこのこ現れて、寄りを戻したいなんて虫がよすぎるだろ。どれだけこの子が傷ついたと思ってんだ。美晴ちゃんはそんな都合のいい女じゃねえよ。帰んな」

 真崎さんは突き飛ばすように陽一の胸倉から手を放した。陽一はその場に尻餅をついてわなわなと震えている。

「ガチかよ…」と陽一は小さくつぶやいて、逃げるように帰っていった。

「あーいってぇ。あいつマジで殴りやがったな。丁度頬骨だよ」

 左頬をさすりながら床に落ちたサングラスを拾い上げる。

「大丈夫か?」

「ていうか真崎さんの方が大丈夫じゃないでしょ!?早く手当てしましょう!」

「手当てするほどじゃないよ。平気」

「いえ、氷で冷やしましょう。持ってくるのでそこに座っててください」

 私は彼の肩を掴んでカウンター席に座らせた。急いでキッチンの冷蔵庫の氷をポリ袋に入れて持ってきた。

「はい、冷やしてください」

 私は氷を彼の左頬に当てた。

「おう、ありがとう」

「巻きこんじゃってごめんなさい」

 私は彼の隣に座って俯いた。

「謝るな。それより、美晴ちゃんが怪我しなくてよかったよ」

 彼は私の肩をポンと叩いて笑った。

「手首、ちょっと赤くなってるな」

 私の左手首は、陽一に強く掴まれたせいでたしかに赤みを帯びていた。

「痛かったろ?」

 彼は私の手首をそっと掴み、親指で赤くなったところを撫でた。

「真崎さんほどじゃないですよ」

 私は彼の行動に驚いて慌てて手を引っこめた。

「真崎さんはなんでいつもサングラス掛けてるんですか?」

 日頃気になっていたことだ。さっきも外れたサングラスをすぐに掛け直していたし。
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