カモミール
「ああ、これ。俺の目見た?」

「まあ。よくは見えなかったですけど、めっちゃ怖かったです」

「あそう」

 彼はただ笑っていたが、急に真面目な顔になった。

「事故のときの怪我で俺の左目には傷が残ってるんだ。不格好だからあまり人に見られたくないの」

 私は聞いてしまったことを後悔した。

「本当は、誰にも知られたくなかったんだ。俺の過去のこと、娘のこと」

「聞いてごめんなさい」

「ううん。美晴ちゃんならいいかなと思って話した」

「じゃあ、もう私の前ではサングラスしなくていいんじゃないですか?」

「え?」

「サングラスなんかで過去を隠さないでくださいよ。今目の前にいる私のこと、サングラス越しなんかじゃなくてちゃんと見てくださいよ」

「どうした急に」

「私、好きです。真崎さんのこと」

 彼のサングラスを外そうと手を伸ばすがそれを制された。

ショックだった。

私の方を見てくれない。

「…そろそろ掃除するか。手伝ってくれる?」

「はい」

 何もなかったかのようにされた。私はいささか気まずい思いを抱きながら店内清掃を始めた。
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