カタストロフィ
「ユーニス、もしかして緊張している?」
隣に立つ愛おしい婚約者に、ユーニスはぎこちなく微笑んだ。
「ええ。だって、あなたの婚約者として表に出るのは初めてだから」
「いつも通りの君で居てくれたら良い。何も頑張らなくても、もうすでに君は立派な貴婦人だ」
蜂蜜よりも甘いその一言に赤面し押し黙ったユーニスを見て、呆れたようにメアリーが口を挟んだ。
「お兄様ったら……見ているこっちが恥ずかしくなるわ」
「まったくだ。いちゃつくのは2人きりになってからにしてくれよ」
マーカスにまで茶化されて、ますますユーニスは赤くなった。
ちょうどそのタイミングで、メイド長が来客を知らせに来た。
今日の主賓、キャロラインをエスコートしにマーカスが退室する。
それと同時に、ユーニスはメアリー、ダニエルと共にサロンへ移動しがてら最後の打ち合わせを行った。
「ミス・マクレガーはダニエルお兄様の演奏をとても気に入ったって、マーカスお兄様がおっしゃっていたわ。音楽を嗜まれる方のようだし、今日の話題に入れた方が良いわよね?」
「あら、メアリーのピアノも込みでの感動じゃなかったのかしら?なんにせよ、音楽の話しならば話題に事欠かないわね。なんたって、プロの奏者が同席しているんだもの」
「そうね。あ、義姉様、ミス・マクレガーってとても髪がお綺麗なのよ。色も珍しいストロベリーブロンドで。お手入れに何を使っているか聞いたら場が盛り上がるかしら?」
「メアリー、ユーニス、母上が来たようだぞ」
ダニエルがドアの向こうをチラッと見たその数秒後、ジェーンが自分つきの侍女を伴いサロンに入室した。
「全員揃ってるわね?マーカスとキャロライン嬢ももうすぐサロンに着くわ。ネリー、お茶の用意をし始めてちょうだい」
「かしこまりました、奥様」
ジェーンの指示を受けた侍女が退室して間も無く、サロンのドアをノックする音とそれに続く声が聞こえた。
「奥様、ミス・マクレガーがご到着されました」
「お入りなさい。いらっしゃい、ミス・マクレガー。さあ、こちらの席へ。マーカス、あなたの席はここよ。今日は私的な場だから、少しくらいは砕けた態度でも構わなくってよ」
ジェーンの言葉で緊張が解けたのか、キャロラインは見るからにほっとした表情で頷いた。
そしてぎこちなく微笑みながら全員を見渡し、ユーニスで視線が止まった。
「メアリーとダニエルは覚えていらっしゃるでしょう?先の婚約発表の場で顔を合わせたもの。こちらはユーニス。ダニエルの婚約者です」
「はじめまして。ユーニス・フレッチャーと申します」
ジェーンの紹介を受けて、すぐさまユーニスは会釈した。


