ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

これからも

城の訓練所は魔獣を呼び出す事が出来る。
魔獣が外に出て行かないように、強い結界も張られていた。

 その中央にローズ様を立たせたジークは、彼女に小さな強い結界を張った。

これなら何が起きても傷一つ負うことはない。
そう、二人に説明した。

ヴィクトール閣下には、少し離れた場所に待機して貰った。
竜獣人が近くにいると実験にならないからだ。


「では、始めます」

 手のひらを天に向け呪文を唱える。
魔法陣が現れるとそこから、ゴゴゴッという音と共に魔獣の顔が現れ、俺を見た後離れた場所に立つ、ヴィクトール閣下に目を向けた。

バシュッ


出てくるはずの魔獣は消えた。

「…………あの」

 何食わぬ顔で同じ場所に立つ、ヴィクトール閣下の顔を見て、言うのを諦めたジークは、もう一度呪文を唱え魔獣を呼び出した。
今度は先程よりも大きな魔法陣を張る。

ピシピシッと結界が音を立てる。魔法陣から魔獣の足が現れた。

現れた魔獣は、ローズ様を見る前に、なぜかヴィクトール閣下を見てしまい……消えた。

はぁ、とため息を吐くと、ジークはまた魔法陣を張る。

さっきより大きい魔法陣から魔獣が出てきた。
結界がバキバキと音を立てている。

 今度現れた魔獣は、ローズ様だけを見据えた。
ローズ様はさすが元騎士( ?)なだけあり、恐れもせずに魔獣を見つめ返していた。


ーーーダンッ

魔獣は聖なる炎に焼かれて消えた。


「……ヴィクトール閣下、これでは実験になりません」

「魔獣が弱すぎるのが悪い」

「もう少し我慢して下さい、目が合うだけで切りましたよね?」

秀麗な顔をしたヴィクトール閣下は、俺から目を逸らした。

「私のローズと目を合わせるなど、許せる訳がないだろう」

 王国最強騎士の名は伊達ではなかった。
この人は目もくれぬ速さで魔獣を消し去った。
それも相当獰猛な魔獣だったのに、すべて一瞬だった……どうやったのか……だが今、それはどうでもいい。
俺は、魔獣が『花』にどう反応するのかを見たいんだ。

ローズ様が、ヴィクトール閣下に「我慢しないとお仕置きするわよ」と、何も役に立たない注意をした。

「お仕置き?」
ニヤリと笑うヴィクトール閣下。
俺は慌てて言い換えた。

「我慢出来たらお仕置きしてあげて下さい、いいですねローズ様」
「……は、はい⁈ 」

 そうして、ようやく魔獣が『花』にどんな反応を示すのかを見る事が出来た。


 調べ終えた俺は、ヴィクトール閣下とローズ様にお礼を述べ、その場で別れエスターの屋敷へと向かった。
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