ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

彼女を助けて

 椅子に座ってウトウトとしていた城の治癒魔法士サラの所へ、血まみれのメイドを抱いたエスターが現れた。

「頼む! 必ず助けて‼︎ 」

 急に来てそんな事を言えば普段のサラなら文句の一つも言う所なのだが、美少年の必死な顔に懇願されたおばさま魔法士は、ポッと頬を赤らめながら「まっ、任せてちょーだい! あたしは城の最高位の治癒魔法士なんだから! 凄いんだからね!」と張り切って言った。

診療台の上に寝かせる様に言って、その子を見たサラは、あまりの怪我の酷さに目を見張る。

「…… 服を脱がせるからあなたは扉の向こうに出てちょうだい」
「でも…… 」
「いやらしいっ、乙女の裸を見るつもりなの⁈ 」
「あっ、はい出ます!」

 エスターは慌てて治療室から出た。
廊下の窓際に置いてある椅子に腰掛け、治療室の扉を青い瞳を不安げに揺らしながら見つめた。

「うわーっ、ちょっとコレは…… 」

 さっきの魔法士の驚いた様な声が聞こえた後、治療室は静かになった。

 扉の隙間から白い光が溢れ出している。治癒が始まったのだろうか?


かなり酷い傷だった……。

 エスターはさっきまで腕の中に抱いていた女の子の重みを思い出していた。

多分、自分と同じ歳ぐらいの子だ。

 オスカー兄さんから手渡された瞬間、全身が粟立ち鼓動が高まった感じがした。あれは何だったのか?
……血の気の失せた顔と血まみれの体を見て鳥肌が立ったのだろうか……。

……どうか助かってくれ、エスターは祈る様に膝の上で両手を組んで無事を願った。
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