ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
「続きは帰ってからね」

 今朝、シャーロットと甘い時を過ごし仕事へと出かけたが……沿岸地域に着いて直ぐに胸騒ぎがした。なんだろう……凄く嫌な感じがする。

何かは分からないが、とにかくシャーロットの元に帰らなければならない。そう思った。

「オスカー、僕は帰る」
「おいっ! エスターお前今来たばっかりじゃないか!」
「じゃあ」
「待て! エスター‼︎ 」

 オスカーの制止を振り切り( オスカーがいるんだから僕は居なくても平気だろう) 公爵邸へと急ぎ戻った。


 帰り着いた公爵邸には何故かシャーロットの気配が無い。

 玄関を入ると慌てて走ってくる母上の姿が見える。
優しく問いただすと、シャーロットは王女のお茶会に行ったという。
すぐに迎えに行こうと邸を出ると、後ろからレオンが( 来てたのか……) 追いかけて来て「彼女は連れ去られた」と話た。

 レオンから、面倒な事になるから王女達に見つからない様に変装していけと言われ、会場にいる男達と同じ格好をした。銀の髪ではすぐにバレると黒髪の被り物までして彼女の元へと向かった。

 すぐ地下の隠し部屋で眠る彼女を見つける事が出来た。無事だと安心したが、抱き起した彼女のドレスは何故かはだけていて、コルセットから艶かしい胸が覗いている。……何でこんなことに⁈

 その上僕の知らない男の名前を呼ぶし、なぜか酔っていて( ……可愛くてキスをしてしまったが ) 苛ついてしまった。

ダメだ、シャーロットの事になると冷静ではいられない。


 どうしてか、彼女からドレスを着るから部屋から出て欲しいと言われてしまった。

僕が見知らぬ男に嫉妬しているのが分かったのか?
泣きそうになっているシャーロット。
側に居たかったが仕方なく外で待つ事にした。
どうせ気配で分かるから大丈夫だ。


 扉の前で彼女の着替えを待っていると、マリアナ王女がやって来た。
コイツは『二度と構うな』と、あの時僕が言った言葉を聞いていなかったのか?
 
 甲高い甘える様な声で次から次へと癇に障ることばかりを話す王女。
……つい、感情を露わにしてしまった。
王女は僕がいつもと違う表情を見せると、ことの他満足した顔をするから嫌だったのに……。
案の定、嬉々としてさらにつまらない話を続けるマリアナ王女。
 その上、連れて来ていたメイドも胡散臭い女だった。
二人して僕の目が金色になっていると言ってくる。
何が、目が金色だよ! 



ーー僕が王女達と話している間に、部屋の中から彼女の気配が消えた。

慌てて入って見れば、やはり誰もいない。



床に……普通には見えないような入り口がある。
地下を……誰かと歩いている……。



「あら、『花』は居なくなってしまったようね」

 マリアナ王女は上手くいったと言わんばかりにほくそ笑む。
そうして当たり前の様に僕に寄り添って来た。

またシャーロットに匂うと嫌われてしまう。
僕はスッと王女から離れ警告した。

「いい加減に僕の事は諦めろ……それ以上つまらない事を口にするのなら、今度は城を吹き飛ばす」

 嫌悪感を露わにして王女を睨みつけた。
父上から王女達には優しく接してくれと昔から言われていたが、もう流石にいいだろう。
この王女は何度言っても何を教えても、一向に分かろうとしないから。
なのに……

「……嫌よ」

 
 もう、ウンザリだ。
その場に王女達を捨て置いて、僕は城へと向かった。


 今から地下を追いかけても無駄だ。
少し寄り道をした後、城の天辺から彼女を探した。
シャーロットは西に向かって進んでいた。


城の西側は小高い丘になっていて緑の芝生が広がっている。

目を凝らすと、そこに彼女の姿を見つけた。

……すぐ横に黒髪の男がいる。

何か話をしているようだ
頭を撫でている⁈
アイツ……!


ーーーーー‼︎


すぐに僕は彼女の下へと飛んで行った。
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