ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
シャーロットが五歳の頃、ディーバン男爵家に家族で訪問した当時八歳のカルロは、彼女に一目惚れをした。
( 妹と同じ歳だというのに、なぜ可愛く見えるのだろう )

 だが、シャーロットの父親とその弟である自分の父はなぜか仲が悪く、彼女とは一度会っただけで疎遠になってしまった。
ところが彼女の両親が不慮の事故で亡くなった。
一人になったシャーロットを両親が引き取ると言い出し、長年想い続けてきた彼女と家族として、一緒に暮らせる様になったのだ。
 
 しかし両親の計らいで、メイドとして扱うことになってしまった。
カルロは、もともと人付き合いが苦手な事もあり、シャーロットに対しどういう態度をとれば良いか分からなくなった。結果として、声もかけず無視をするという冷たい態度をとってしまった。

 けれど、カルロはいつも陰ながら彼女を見ていた。
気づかれない様に……見守っていたのだ。
彼なりに……
 子供の頃から内気で思い込みの強いところがあるカルロは、月日が過ぎていくほどにシャーロットへの想いを拗らせていった。

 いつの日か僕がロッティ(シャーロット)と結婚する。
いとこ同士は結婚できる。

……何をするでもなく、ただ遠くから見守るだけの日々は続いていた。

 そんなある日、両親が彼女を城へと働きに出してしまった。けれど半年経てばまた此処へ帰ってくるのだ。
その時には自分の、この気持ちを伝えよう。
ずっと見守って来たんだ、彼女も気が付いている。
僕からの告白を、待っている。

 だが、両親が知らぬ間にドルモア伯爵と婚約させていた。半年振りに帰って来たシャーロットは、城で背中に大きな傷まで負ってきていた。
でも、大丈夫だ。
きっと僕が何とかしてあげるから……


ーーそう思っていたら、この国で最も強い種族と云われる竜獣人の若僧が、シャーロットの事を『花』だと言って連れて行ってしまったーー

『花』って何だ⁈ 勝手なヤツらめ。
印とか訳がわからない。どうせ獣人にしか分からない事なんだ、婚約しようが僕には関係ない。
ロッティと結婚するのはこの僕だ。

 そうして、ソフィアの結婚式にシャーロットが必ず来ると見込んで、あの指輪を持っていたのだ。

 やはり彼女は来ていた、それも一人で……婚約者の男は出席すらしていない。
それに彼女は婚約して随分経つのに、婚約指輪も着けていない。

ああ、彼女はきっと公爵家で辛い思いをしているんだ……。

 可哀想なロッティ、いつでも僕のもとに帰っておいで……
< 87 / 145 >

この作品をシェア

pagetop