ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

もう一人のシャーロット

「ああ、エスター様っ! どうして貴方はそんなに美しい目で私を見つめるの……」


……会うたびに私がこんなに熱く見つめているのに、あなたはどうして違う『シャーロット』と結婚してしまったの……






 マリアナ王女の陰に隠れる様に、いつもエスターに熱い視線を送る令嬢がいた。

 その人物はマリアナ王女様の友人の一人、シャーロット・バート侯爵令嬢である。

 今年、十八歳になるシャーロット嬢は三年ほど前に、身分と大人しい性格からワガママなマリアナ王女の相手にちょうどいいと、友人兼教育係りとして選ばれてしまった。当時は渋々引き受けたのだが、結果としてその事は彼女に運命的な出会いをもたらすことになる。
そう、エスターとの出会いだ。
 
 レイナルド公爵令息の二人は有名だった。遠くから見た事は何度もあったのだが、その時は特別な感情は持つことはなかったのだ。しかし、マリアナ王女に呼ばれて現れたエスターを、初めて間近で見たシャーロット嬢は衝撃を受けた。

 この方こそ私の王子様だわ……

サラリと背中まで伸びる銀色の髪と透き通る様な青い瞳、スッと通った鼻筋、少し薄い唇はなぜか自分にだけ口角が上げられている気がする。

 彼女は一目で恋に落ちた。
エスターは公爵令息で自分は侯爵令嬢だ。身分は何の問題もない。容姿だって釣り合っている。
自分で言うのもなんだが、美しいと褒められる赤みを帯びた金の髪に茜色の瞳、形の良い小さな鼻にぷっくりとした唇、誰の目も引きつけてしまう程の豊満な胸。

きっとエスター様も夢中になってしまうだろう……

 
 だが、自分から気持ちを伝える事は出来ない、許されないのだ。マリアナ王女が彼にご執心なのは、誰もが知り得る事だったから。

  マリアナ王女は何かとエスター様を呼ぶ。自分達、友人( マリアナ王女は思っている ) に仲の良さを見せびらかす為に呼ばれるのだ。

 しかしそれはシャーロット嬢にとっては願ってもない事だった。エスター様に会えるのだから。
何度かエスター様の隣に座る事があり、その時には言葉も交わした。
転びそうになった体を支えてもらった事だってある。「大丈夫ですか?」と言葉を掛けてくれた……彼の美しい唇から出てくる優しく気遣いのある言葉。

 時折自分に向けられる凄艶な眼差しに、何度頬を染めただろうか……

 エスター様に会えば会うほど好きになっていく、彼に恋焦がれる気持ちは止められなかった。
けれどライバルは王女様なのだ、シャーロット嬢は自分の気持ちを押し殺していた。

 まだ婚約者のいないバート侯爵家のシャーロット嬢には、幾度となく見合いの話が上がっていた。周りの殿方は美しい彼女を放っては置けないのだろう、けれど彼女はその全てを断った。
 もしかすると、エスター様と恋仲になれるかもし知れない……シャーロット嬢はその希望を捨てきれなかったのだ。
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