幽霊少女は30秒を少年に 少年は一生を幽霊少女に
リビングに着くと二人で食事する両親の姿があった。
「母さんごめん。もう大丈夫だから」
「じゃあご飯の準備するから座っててね」
僕は母に甘え、椅子に座った。
叶は座るのかな。
さっきからずっと飛んでるけど疲れないのかな。
でもうちには椅子が三脚しかない。
叶用の椅子を準備した方がいいのかな。
「体調は大丈夫なのか。母さんからさっき修太朗が変だったと聞いたが」
「もう大丈夫だよ」
「なんでも幽霊が見えたとか」
叶のことを話したとして父は信じるだろうか。
少し目を向けると叶は笑っていた。
「少し見えたんだ。見えたような気がした。夢だったかもしれないけど」
とりあえず今ははぐらかしておこう。
「さあさあご飯だよ。たくさん食べな」
今日のご飯は天ぷらだった。
今朝はいろいろと重なったこともあり、味覚がうまく働いていなかったように感じる。
味もしなければ、ご飯の温かさすらも感じなかった。
箸で一口分を口に運ぶ。
「おいしい…」
あまり食事に期待はしていなかった。
だけれども今晩の夕飯は、ご飯の温かさもおいしさも感じることができた。
少し緊張や考え事が減ったこともあるのだろう。
それに今朝の食事が作業になっていたこともあり、この食事は幸せそのものだった。
それを見て、ニコニコとほほ笑む叶がいた。
僕は目の前の幸せを口に何度も運ぶ。
あっという間に食べ終わってしまった。
はじめは食事を見られていて少し恥ずかしいと感じたが、途中からは気にならなくなっていた。
「ごちそうさま。僕は部屋に戻るよ」
「ちゃんと休むんだぞ」
父からの声はいつもより優しかった。
「ご飯おいしかったでしょ!」
「すごく」
「あんな幸せそうな修ちゃんを見ることができて、私もおなかいっぱいです」
「幽霊になってから何も食べてないのか?」
「そうだね~おなかは空かないし。食べてないよ」
「そうなのか」
幽霊って寂しいな。
死んでしまっても、未練か何かからこの世界に漂って。
楽しみもあまりないのだろう。
僕が叶を見えていなかったら、叶の声が聞こえなかったら、
目の前で見せてくれている、この笑顔はないのだろう。
「なにか考え事?」
まずは叶が喜ぶことをしてあげるのがいいかもしれない。
楽しみを作ってあげたい。
「叶は昼って外に出れるのか?」
「多分大丈夫だよ!」
「明日は学校に行ってみないか?
年も近いと思うし、学校に行ったら何か思い出せるかもしれないよ」
「修ちゃんと一緒なら行くよ!」
できるだけ早く、この女の子をはやく楽にしてあげたい。
僕のことを好きと言っていたが、僕が叶のことを見えて話せているからだろう。
ちゃんと成仏させてあげよう。
こんないい子に辛い思いをさせないように。
部屋に戻り、宿題をするために椅子に座って机に向かう。
「叶は先に寝ててもいいぞ」
「じゃあ寝ちゃおうかな。おやすみ!修ちゃん」
「おやすみ」
ベッドで横になった少女を横目に、何もない机の上に教材を広げる。
しばらく問題を解いていたが、あくびが止まらなくなっていた。
「僕も早く寝よう」
問題を解き終えた僕には、もう動く気力は残っていなかった。
「母さんごめん。もう大丈夫だから」
「じゃあご飯の準備するから座っててね」
僕は母に甘え、椅子に座った。
叶は座るのかな。
さっきからずっと飛んでるけど疲れないのかな。
でもうちには椅子が三脚しかない。
叶用の椅子を準備した方がいいのかな。
「体調は大丈夫なのか。母さんからさっき修太朗が変だったと聞いたが」
「もう大丈夫だよ」
「なんでも幽霊が見えたとか」
叶のことを話したとして父は信じるだろうか。
少し目を向けると叶は笑っていた。
「少し見えたんだ。見えたような気がした。夢だったかもしれないけど」
とりあえず今ははぐらかしておこう。
「さあさあご飯だよ。たくさん食べな」
今日のご飯は天ぷらだった。
今朝はいろいろと重なったこともあり、味覚がうまく働いていなかったように感じる。
味もしなければ、ご飯の温かさすらも感じなかった。
箸で一口分を口に運ぶ。
「おいしい…」
あまり食事に期待はしていなかった。
だけれども今晩の夕飯は、ご飯の温かさもおいしさも感じることができた。
少し緊張や考え事が減ったこともあるのだろう。
それに今朝の食事が作業になっていたこともあり、この食事は幸せそのものだった。
それを見て、ニコニコとほほ笑む叶がいた。
僕は目の前の幸せを口に何度も運ぶ。
あっという間に食べ終わってしまった。
はじめは食事を見られていて少し恥ずかしいと感じたが、途中からは気にならなくなっていた。
「ごちそうさま。僕は部屋に戻るよ」
「ちゃんと休むんだぞ」
父からの声はいつもより優しかった。
「ご飯おいしかったでしょ!」
「すごく」
「あんな幸せそうな修ちゃんを見ることができて、私もおなかいっぱいです」
「幽霊になってから何も食べてないのか?」
「そうだね~おなかは空かないし。食べてないよ」
「そうなのか」
幽霊って寂しいな。
死んでしまっても、未練か何かからこの世界に漂って。
楽しみもあまりないのだろう。
僕が叶を見えていなかったら、叶の声が聞こえなかったら、
目の前で見せてくれている、この笑顔はないのだろう。
「なにか考え事?」
まずは叶が喜ぶことをしてあげるのがいいかもしれない。
楽しみを作ってあげたい。
「叶は昼って外に出れるのか?」
「多分大丈夫だよ!」
「明日は学校に行ってみないか?
年も近いと思うし、学校に行ったら何か思い出せるかもしれないよ」
「修ちゃんと一緒なら行くよ!」
できるだけ早く、この女の子をはやく楽にしてあげたい。
僕のことを好きと言っていたが、僕が叶のことを見えて話せているからだろう。
ちゃんと成仏させてあげよう。
こんないい子に辛い思いをさせないように。
部屋に戻り、宿題をするために椅子に座って机に向かう。
「叶は先に寝ててもいいぞ」
「じゃあ寝ちゃおうかな。おやすみ!修ちゃん」
「おやすみ」
ベッドで横になった少女を横目に、何もない机の上に教材を広げる。
しばらく問題を解いていたが、あくびが止まらなくなっていた。
「僕も早く寝よう」
問題を解き終えた僕には、もう動く気力は残っていなかった。