アンドロイド・ニューワールドⅡ
「こんな…見切り発車的な計画で、本当に上手く行くのか、俺は心配だよ」

と、奏さんは言いました。

成程、それは浮かない顔にもなりますね。

私は『新世界アンドロイド』なので、表情は変わりませんが。

「上手く行かないだけならまだしも…。そのせいで、瑠璃華さんが責められるようなことにならなきゃ良いけど…って、それも心配」

と、奏さんは言いました。

心配事がいっぱいありますね、奏さんは。

寿命が縮みますよ。

「でも、中学校のときも、調理実習はあったのではないのですか?そのときは…?」

「中学のときも、勿論調理実習はあったよ。でも、作るメニューもレシピも、あらかじめ先生か用意したものだったから…」

と、奏さんは説明しました。

成程。今回のように、メニュー決めやらレシピ探しやら、全てを生徒に任せる形式の実習は初めて、ということですね。

改めて考えてみると、随分思い切った課題です。

「奏さんの心配は、よく分かりました」

と、私は言いました。

「しかし、ご安心ください。世の中には、なるようになるという言葉もあります」

「それは…なるようにはなるだろうけど、上手く行くかどうかは分からないでしょ」

と、奏さんは言いました。

奏さんの仰ることは最もです。

しかし。

「大丈夫です。何せ、リーダーを務めるのは、夏休みの間に料理を極めたこの私です。いざとなったら、どうとでもしてみせましょう」

「え?いや、うん…。極めたって…お茶漬けを、だよね…?」

「家庭科の調理実習程度、碧衣さんも難なく乗り越えていたことですし。彼に出来るなら、同じ『新世界アンドロイド』である私にも、出来ないことはないでしょう。お任せください」

「う、うん…。あの、いざとなったら、俺も手伝うから…。何でも言ってね」

と、奏さんは有り難い申し出をしてくれました。

それは、とても心強いです。

俄然、何とかなるような気がしてきました。

そして私がいるからには、必ず、何とかしてみせましょう。
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