アンドロイド・ニューワールドⅡ
現在、私は通信室にて、他局の局長達と通信中である。

私と、第2局の紺奈局長と、第1局の橙乃局長の三人。

お互い画面に顔が映ってるから、こっそりチョコを齧れなくて残念。

だけど、今はそれどころじゃない。

瑠璃華ちゃんのメンテナンスを終えて、アパートに返したその日に。

まさか、条件付けを発動させる事態に発展するとは。

って言うか、市井で『新世界アンドロイド』が三人も集まってる時点で、こちらとしてはなかなかびっくりだったよ。

三人が一堂に会していることを、GPSの位置情報で知って。

慌てて会話の様子を、こちらでも中継してみたら。
 
予想以上に物騒な会話をしてて、私は度肝を抜かれたよ。

主に危ないのは、瑠璃華ちゃんじゃなくて、碧衣君とキルケーちゃん…琥珀ちゃんだけど。

碧衣君相手に、煽るのはやめた方が良い。

あの場に瑠璃華ちゃんがいて、二人を止めていなかったら…。

…うぅ。恐ろしいことになる未来が見える。

その点、何事も起きなくてホッとしたけど。

でも、かなり危ない橋を渡ったことに変わりはない。

『うちの1110番が、申し訳ないことをした』

相変わらず律儀な紺奈局長が、こちらもまた頭を下げていた。

可哀想。

「どちらかと言うと、紺奈局長は被害者だと思うけど…」

色んな意味でね。

『その通りです。我が局の2017番が、失礼なことを言いました。彼女に代わって、私が謝罪します』

橙乃局長が、再び頭を下げた。

謝り合戦が始まっちゃった。

『決して、第2局と紺奈局長を侮辱するつもりはありません。それだけはご理解頂きたい。そして、2017番の無礼な発言をお許し頂きたい。彼女に悪気はないのです』

悪気はないね、確かに。

ただ、やる気が空回りしてるだけで。

やる気があるのは、良いことなんだけど…。

『無論。こちらこそ、1110番の挑発的な発言を謝罪する。あれにも悪気は…悪気はない』

何で言い直したの、紺奈局長。

大丈夫だよ。碧衣君に悪気がないことは分かってる。

ただ彼の場合…紺奈局長への熱い思いを、色々拗らせてるってだけで…。

彼も、やる気だけはあるんだよなぁ。

こうなってくると、誰も責められないよね。

今回のことは、不可抗力で済ませるには危険過ぎたけど、でも、誰かに悪意があった訳じゃない。

故に。

「まぁ、二人共。そんな謝り合戦しなくても大丈夫だよ」

私は、謝罪を繰り返す二人の間に、割って入った。

私も、瑠璃華ちゃんみたいなことしてるなぁ。
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