アンドロイド・ニューワールドⅡ
…その日の放課後。

その頃には、冷却が終わり、私は通常稼働に戻っていました。

「全く…いきなり動かなくなるから、どうしたのかと思ったよ…」

と、奏さんは困ったように言いました。

それは、心配をお掛けしました。

「『新世界アンドロイド』は、脳内で処理しきれない情報が入った場合、脳内の回路が焼けるのを防ぐ為に、自動で冷却装置が作動する仕組みになっているのです」

「そう…それは便利だね…」

「はい。ありがとうございます」

と、私は言いました。

今は、もう大丈夫ですよ。

ちゃんと、情報処理を済ませています。

…奏さんが、何処にも行かないという選択をしたことも、分かっています。

しかし、だからこそ。

「…本当に良かったのですか?」

と、私は聞きました。

どうしても、再度確認せずにはいられませんでした。

その場の一時的な、気の迷いから。

現状維持という選択をしてしまったのではないか、と心配だったのです。

もっと落ち着いて、よく考えてみてはどうでしょう。

転校されるにしても、されないにしても、来年度まであと一学期はあるのですし。

しかし、奏さんの決意は固いものでした。

「うん、良い。何の後悔もしてないし、未練もない」

と、奏さんはきっぱり言いました。

その表情は、とても清々しいものに見えます。

…そうですか。

奏さんが、そこまで仰るなら…。

「まぁ、叔母さんは残念がってたけどね。せめて、長期休みのときはこっちに来て、って言ってた」

と、奏さんは苦笑いしながら言いました。

そうでしょうね。

奏さんの叔母は、準備万端整えて、奏さんがやって来るのを待っていたのでしょうし。

帰らないと言われて、ショックだったのではないかと思います。

何だか申し訳ないですね。

「でも、俺が…今いる友達と離れたくないんだって説明したら、ちゃんと分かってくれたよ。良い友達を持ったねって」

「…」

「俺もそう思う。良い友達がいて、俺は幸せだよ」

と、奏さんは言いました。

私も、同じ気持ちです。

不思議なことに。

奏さんがここに残ると仰った、その瞬間から。

私の中にあった悲しみや寂しさが、綺麗さっぱり、消えてなくなったのです。

あれほど苦しく、胸の中に渦巻いていた感情が。

奏さんの一言で、あっという間に消えてしまうとは。

なんとも人間の心というのは、理解し難い不可思議なものですね。
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