望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 でもたまに、あの子がやってくる。花々をかきわけてすっと姿を現すのだ。
 カサッっと音がした。音がした方に顔を向ける。ゆっくりと近づいてくるそれ。黒い豹。
 彼はいつもカレンの足元に寄って来て、その身体を気持ちよさそうにこすりつける。カレンは噴水から降りると、彼の頭を撫でる。それが、いつものことだ。
 だが、今日のそれはいつもと違う。じっとカレンを見つめている。
 カレンは噴水の石段から立ち上がると、ゆっくりと黒豹に近づいた。いつもと違う様子が気になったからだ。

「あら?」
 近づいてわかった。いや、近づく前からも薄々と感じてはいたのだが。

「あなたいつもの子ではないのね」
 そこでカレンはドレスの裾とともに膝を折った。
 それが首につけているのは、以前、魔力付与した組紐。

「大きい子の方ね」
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