望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 二人は馬車に乗り込んだ。並んで座る。
 カレンは気付かれないようにため息をついた。この夫と一緒の空間も耐えられないのだが、これから行く場所を考えるともっと耐えられない。感情というものを押し殺すしかないのだろうか。何も考えず、何も感じず。
 膝の上で両手を重ねていたその手を、温かく包んでくるものがあった。レイモンドの手だ。

「緊張、しているのか?」

 驚いて、カレンが彼を見上げると、レイモンドはそう言った。「手が、冷えているな」
 手袋越しであるのに、お互いの体温を感じるらしい。

「ええ。少し」
 カレンははにかんだ。

「そうか」
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