望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 バチンッ。

 乾いた音が響いた。レイモンドがカレンの頬を叩いたのだ。

「ジェルミー公爵夫人としてふさわしい振舞をしろとあれほど言ったはずだが」

 カレンは叩かれた頬を左手で押さえている。多分、いや絶対にこの頬は赤く腫れているはずだ。

「旦那様。そんなに私が気に入らないのであれば、離縁してくださってもよいのですよ? できるわけ、ないと思いますが」

 首を傾け、口角をあげ、そして視線をあげてレイモンドを睨みつけた。

「これ以上、私に恥をかかせるな。帰るぞ」
 その頬を押さえている手を無理やり引っ張って、レイモンドは外へと向かった。
 その様子を、王太子妃は奥歯を噛み締めて見ていた。
< 126 / 269 >

この作品をシェア

pagetop